【新着レポート】電子カルテデータベースによる 慢性心不全における治療薬の処方実態分析
2023/09/12
電子カルテデータベースによる 慢性心不全における治療薬の処方実態分析
https://pv.eucalia.jp/data/958/
本レポートは、2023年9月に開催された「第71回日本心臓病学会学術集会」において弊社が行った一般演題発表を基にしたもの。
近年の新規心不全治療薬の登場により、心不全治療ガイドラインにおける慢性心不全への推奨薬剤は大きく変化しており、特に、β遮断薬、SGLT2阻害薬、ARNI、MRAの4つの薬剤クラスについては、「Fantastic four」と呼ばれている。
一方で、心不全治療薬の処方順序や薬剤ポジショニング、処方変更までの日数については議論が続いており、それらの処方実態を明らかにした研究はまだ数少ない。
そこで本研究では、株式会社ユカリアの電子カルテデータによるデータベースを用いて、中小規模病院における慢性心不全治療における治療薬の処方実態を明らかにすることを目的とした。
Fantastic fourの処方期間・順序については、従来のシーケンスでは6か月ないしそれ以上の期間をかけて処方されていたが、近年の先行研究では、患者背景により順序に若干の違いはあるものの、4週から12週という迅速さで4つの薬剤クラスを処方することが提案されている。
2018年1月から2022年12月をデータ期間、2020年9月から2022年12月を観察期間とし、データ期間内に慢性心不全と診断された患者4,349名について以下2つの分析を行った。
分析1:β遮断薬、SGLT2阻害薬、ARNI、MRAが初回処方され処方変更が行われた患者の「薬剤の処方順序」
分析2:同「処方変更までの日数」
分析1の結果は、変更パターンは1剤から開始するケースが最も多く、β遮断薬、MRAが選択される例が多いというものだった。その後は、2剤目のアドオン、2剤から1剤へ減らすパターンが多い。
また、分析2の結果は、対象患者のうち観察期間中に4つの薬剤クラスすべてを処方している患者はごく僅かというものだった。ただ、その患者の中で初回処方日から4つの薬剤クラス全てを処方されるまでの日数をみると、先行研究で提案された4週(28日)~12週(84日)以内で達成している割合が約7割と高かった。
弊社としては、今後はLVEFの値を用いてHFpEF、HFrEFの別で患者層を層別したり、LVEFの時系列推移とあわせて検討することで、薬剤クラスのポジショニングに関するさらなる分析を進めていきたいと考えている。